オシロスコープ用プローブの校正
             過渡特性(トランジェントレスポンス)
    プローブを10:1(100:1,1000:1も同様)でお使いになる場合、まずオシロスコープの入力キャパシタンスに
     プローブのキャパシタンスを補正させる必要があります。(1:1の場合は調整は不要です)
           * 電流プローブに関する計測上のヒント等添付(最下段) 
校正の仕方
 1: オシロスコープの垂直電圧感度はDC入力、0.1V、水平時間軸は0.5ms付近に設定します。
 2: オシロスコープの入力コネクタ(BNC)にプローブを接続します。
 3: プローブの先端の針の部分をオシロスコープのCAL(キャリブレータ:校正器)信号出力に接続(接触)します。
 4: プローブのヘッドにあるx1、x10切り替えスイッチをx10(10:1)にします。垂直感度を見易い様に再調整します。
 5: CAL信号の矩形波/スクエアウエ-ブが下記の図と同様に表示されるように
    プローブのヘッドにあるトリマー*(半固定キャパシタのツマミ)を付属のプラスチック製ドライバーで調整します。
    *プローブのBNCコネクタ側の整合ボックスにある高周波用トリマーで調整を必要とする場合があります。
 6: 垂直の振幅表示がCAL信号とプローブの10:1の関係になっていることを確認します。
 7: 以上で完了です。   DCから所定の周波数**まで計測できます。フラットな特性は表示帯域の1/5程度となります。  
     ** -3dBポイント(約70%電圧減衰値、電力値では1/2)をそのプローブの周波数帯域(特性)としています。
     オシロスコープを替えた場合、同一タイプのオシロスコープでも若干容量が違いますので、同様に校正・調整します。
     引っ張ったり、投げたり、ゆすったりしますと、断線、接触不良など起きますので、丁寧に取扱って下さい。
probe-calibration
     校正(入力容量の補正)が合わないと主に波形の立ち上がりの部分が丸くなったり、尖ったりします。
     周波数により、振幅・位相が変化する為、正しい計測が出来ません。






        【立ち上がり時間の誤差図】
 オシロ(プローブを含む)の立ち上がり時間と、入力波形の立ち
        上がり時間の関係を示します。
 1)同じ立ち上がり時間(1:1)では40%も誤差が出ます。
 2)2%の誤差で測る場合は5倍(5:1)の立ち上がりを持ったオシロが
        必要です。
 3)上の帯域の図で示しました様に精度良く計測するには
        5倍以上の帯域・立ち上がりのオシロ(プローブを
        含む)が必要です。




【デレーティングカーブ】

 
オシロプローブには、最大入
 力電圧(耐圧)が規定され
 ています。
 一般的にDCやAC電圧
 (600Vdc+peakACなど)で表
 示されています。
 入力周波数によって、この最
 大入力電圧は減少します。
 これをデレーティングカーブと
 言います。
 (図 2.5KV耐圧の例)
リードアウト付きプローブ
 プローブの減衰比10:1,100:1等を自動的に検知してVolt/divスケールを自動調整する機能が付いた
 コーディング付きプローブです。 オシロのBNC入力コネクタ(またはその付近に)にCoding Ringなど
 付いている場合に機能します。
システムバンドパス/System bandpass(band width)
 最近はシステムパンドパスで表示されるようになりましたので、100Mhzのプローブは
 プローブ先端からオシロまで含めて100Mhz帯域が保証されます。
 公称100Mhzのプローブを500Mhzのオシロに使用すれば総合的に100Mhzオシロシステムになる場合と、
 200Mhzや300Mhzなど予想外のシステムになる場合もありますのでご注意下さい。
 最適な計測システムの構築には、100Mhzオシロには100Mhzプローブ、500Mhzオシロには500Mhzプローブのような組み合わ
 せで使用します。
 オシロとプローブの帯域が、あまりかけ離れた特性のもどうしの接続は行わない方が無難です。
過渡特性/トランジェントレスポンス/Transient response
 
 上記、校正の欄で方形波によるプローブとオシロの
 入力整合の仕方を記載しましたが、
 回路・伝送系の周波数応答特性は方形波/矩形波の
 パルスを入力して出力を見れば判ります。
 また、正弦波(サインウエーブ)を低周波から高周波
 まで切り替えて入力/出力を比較して特性を見る方法
 も一般的に行われます。
 パルス(立ち上がりの速い、きれいなリーディング
 エッジ、 フラットトップのパルス)を入力して、
 回路・伝送系出力波形から低周波帯域の歪・ゲイン
 変動や中間の帯域あるいは、高周波帯域の歪・利得
 減衰 変動を読み取ることが出来ます。
 繰り返しは遅くても、立ち上がりの速いパルスは高周
 波成分を持っている為、サイン波を入力しなくても、
 Tr=0.35/BWの公式から周波数特性が判ります。

 伝送系特性観測用のTDR(Time Domain Reflectometer)
 
スコープはこれを応用したものです。
 高電圧プローブ(差動型プローブを含む)と高周波サイン波の計測
  高電圧プローブは入力インピーダンスが非常に高く1GΩに達する場合もあります。
  信号源も同様に高インピーダンス*の場合が多く、入力はリード線が長く、プローブのケーブルも長くなります。
  これらのため、経験ではプローブによりますが、数10Mhz以上で10MΩ入力の10:1プローブのように安定した特性が得にくい
  のが実状です。 ケーブルを動かしたり、手をプローブに近づけたり、アース点を変えたりするだけで特性が大きく変わる時があり
  ます。
  また、周波数帯域内に於いても、振幅が上下する場合があります。 振幅が下がる時は、耐圧やデレーティングカーブ以内に於い
  てもオーバーヒートの危険も生じる場合があります。パルス波で、上図の下の波形のような高周波ひずみ/リンギングが多い場合、
  要注意です。 高電圧プローブ(差動も含む)はパルス計測に向いているとも言えます。最近はパルス回路とその計測が多くなって
  いますので幸いです。
     
*10:1、1:1のプローブでも、入力信号回路/プローブ入力は50Ω基準に於いて、測った場合の特性です。
  電流プローブ(クランプ型)について    
   
正しい組み合わせで、電圧プローブのような補正は不要です。50Ω終端器が必要なアンプ方式などがります。
 * 電流回路を切断せずに電線・ワイヤ等をクランプすることで、DCから高周波のAC/パルスも計測出来ます
 * 電流プローブの出力はオシロスコープ(又は、デジタルマルチメーター/DMM)へ繋ぎ計測します
  * 最新の電気・電子回路は、例えば電源回路に於いても、従来の50/60/400hzAC・サイン波よりも高周波
   パルス波・変調波を多用しています。 まず、電流(電圧)波形等を確認することが必要です
 * 電流はグランド・アース基準ではなく、回路・電線に流れる量を測ります。
   (一種のフローティング計測となります・・計測部やアースとの耐圧にはご注意ください)
  * 電流の流れる向き(+/-)で加算・減算(差動)が出来ます。
    感度不足にはクランプするワイヤを2回巻付けると2倍に上がります。
    DCが重乗して飽和する場合は、逆向きのDCが流れるワイヤを同時にクランプすればダイナミックレンジが改善されます。
    +、-のワイヤを同時にクランプすれば、その差が出力されます。(2入力の差動プローブと同じ)
  プローブトップ                                 2011-9up  2014-4-rev